宇宙

   宇宙
                  鹿島倭弧

  2016年のNASAの発表では、宇宙には少なくとも銀河が二兆個あるそうだ。仮にひとつの銀河にひとつの文明しかないとしても、二兆個の文明があるということになる。それほどあるのなら、なんだか人類が滅び去ってもどうでもいいことのように思えてくる。いや、むしろ逆に人類一人の命は銀河よりも重いという価値観も悪くないのかも知れない。
  一命を賭して、国や大きなものを守ることは正しいことのように考えてきたが、疑問にも思えてきた。それよりも一匹の猫を助けるために十の銀河を犠牲にしても、数の上でいくと、猫は地球上に現在十億匹らしいので、猫の方が銀河より希少な訳である。
  結局、数や大きさや長さなど関係なく、その者にとって何が大切かが重要なのだろう。ひとつの命の犠牲で、百万の命を救えるなら犠牲になれと思う人もいるし、一億犠牲になってでも、守らねばならぬ命があると感じている人もいる。
  子供と笑い合う瞬間は、または猫をひと撫でする幸福は、十の銀河より価値があると、そう思えるくらい宇宙はでかい。そんな風に宇宙を考えていると、その大きさ故に、人生の苦悩も塵のように思えて、その大きさ故に、今日、もし嬉しい瞬間があったなら、その喜びは宇宙よりも価値があることなのかも知れない。